ストーリー

銀山の梅にそっと舞い降りた、小さな神秘。
自然の恵みと共に生きる、
豊かな「発酵文化」を、島根の明日へ。

昔ながらの里山風景と、豊かな生態系が残る島根県・石見銀山。
「梅花酵母」とは、この場所に咲く梅の花に、ひそやかに生息していた自然酵母です。
各地にその土地特有の言葉があり、その土地の作物があるように、発酵という自然作用を生み出す、この目に見えない微生物もまた、天から授かったふるさと島根の地域資源。
古来より味噌、醤油、日本酒はもちろん、藍染めや家屋の土壁など、衣食住に発酵のチカラを活かしてきた日本人。私たちは、そんな先人の知恵に現代の技術を加えて、21世紀の発酵文化を、島根からゆっくり熟成させていきたいと思っています。

どぶろくの中で目覚めた、小さな息吹

どぶろく

「梅の花から自然酵母が採取できないだろうか」。
最初にそう考えたのは、農学博士でもある房薇(ファン・ウェイ)氏(株式会社石見銀山生活文化研究所)。2009年春、ちょうど銀山公園の梅が満開になった頃、花を集めて島根県産業技術センターに持ち込みました。古くから伝わる「どぶろくで酵母を起こす」方法で採取に挑んだ研究チーム。蒸し米に麹を加えて培地とし、梅の花をそっと置いて待つことしばし。やがて見事にぶくぶくという泡立ちが。「自然酵母の採取は宝くじに当たるようなもの、何年かかるか分からない」という予想を裏切り、酵母が私たちの前に姿をあらわした瞬間です。

銀山と梅、その切っても切れない関係

銀山と梅、その切っても切れない関係

戦国~江戸時代にかけての最盛期には、世界の銀の約1/3を産出したといわれ、その史跡的価値と文化的景観で、世界遺産に選ばれている石見銀山。江戸時代後期には、銀山の坑道で働く鉱夫たちは、粉塵や鉱毒から身を守るため、柿渋マスクに梅肉を塗っていたと伝えられています。そのせいか今でも銀山周辺には多くの梅の木が植えられ、山深い里に春の訪れを告げる喜びのシンボルとなっています。流れゆく時代の中でも、変わらず銀山のまちを見守ってきた梅と、そこに宿っていた酵母。ここから今、新しい物語が始まろうとしています。

オリジナル種として特許を取得した梅花酵母

銀山と梅、その切っても切れない関係

島根県産業技術センターの土佐典照氏により、日本醸造協会が供給する協会酵母とは異なるオリジナル種であることが確認された梅花酵母。発酵飲食品づくりに有用な酵母として、2012年に特許を取得しています。酵母菌は大きく「分裂酵母」と「出芽酵母」とに分けられますが、梅花酵母は出芽酵母の一種と見られ、芽を出すように繁殖するのが特徴です。

梅花酵母の特長と可能性

寒さに耐え、春を待つ梅を思わせる生命力。
天から授かった「万能酵母」のひみつ。

ひみつ1皮膚老化原因の「糖化現象」に抑制効果

人の皮膚は加齢に伴い、AGEs(後期糖化生成物)の一種であるCML(糖酸化生成物=肌の酸化・サビの指標)が増加することが知られています。AGEsは皮膚の黄色化や弾力性低下など皮膚老化の原因であり、今ではこのAGEsの形成を抑制することが、化粧品等の研究者の重要な課題となっています。
最新の発表によれば、梅花酵母エキスは、老化現象の原因となる“CMLの形成”に対する抑制効果(抗糖化効果)があることがわかっています。また、梅花酵母エキスを配合した化粧品で4週間のモニター試験を行ったところ、皮膚表面の水分蒸散量を抑止し、肌のハリ向上など肌質改善作用が認められました。

■梅花酵母エキスの有効性
(1)抗糖化作用

梅花酵母エキスと糖化産物(AGEs)誘導財グリオキサールで同時に処理した正常ヒト真皮線維芽細胞(NBR1GB)におけるAGEsをドットブロッティングで測定。梅花酵母エキスの有意なAGEs形成抑制作用が確認された。

(2)フィブリン5遺伝子発現促進作用

梅花酵母エキスで処理したNB1RGBにおけるフィブリン5の遺伝子発現をRT-PCR法で測定。梅花酵母エキスの有意なフィブリン5遺伝子発現促進作用が確認された。

(3)ヒアルロン酸合成酵素(HAS3)遺伝子発現促進作用

梅花酵母エキスで処理した正常ヒト表皮角化細胞(NHEK)におけるヒアルロン酸合成酵素(HAS3)の遺伝子発現をRT-PCR法で測定。梅花酵母エキスの有意なHAS3遺伝子発現促進作用が確認された。

(4)フィラグリン遺伝子発現促進作用

梅花酵母エキスで処理したNHEKにおけるフィラグリンの遺伝子発現をRT-PCR法で測定。梅花酵母エキスの有意なフィラグリン遺伝子発現促進作用が確認された。

(日本コルマー株式会社による、2015年日本薬学会発表要旨から抜粋、改変)

■梅花酵母エキス配合化粧品による、肌質改善効果(4週間のモニター試験より)

梅花酵母で発酵した「美容補助食品」と梅花酵母エキス配合化粧品を併用することで、老化による皺に改善効果が確認できました。

(1)梅花酵母エキス配合化粧品による、肌質改善効果(4週間のモニター試験より)

(2)梅花酵母エキス配合化粧品による、肌質改善効果(4週間のモニター試験より)

(3)梅花酵母エキス配合化粧品による、肌質改善効果(4週間のモニター試験より)

(日本香粧品学会 抗シワ評価機能ガイドラインで設定されているシワグレードによる判定)

ひみつ2糖を分解するインベルターゼ酵素活性が高い

インベルターゼは、酵母菌の中に含まれている一種の酵素で、砂糖(ショ糖)をブドウ糖と果糖に分解させる力があります。パンを発酵する間に、酵母菌はこのブドウ糖と果糖を主食として利用し、菌数を繁殖させます。同時に酵母菌は繁殖成長しながら、炭酸ガスとアルコールを産出し、パン生地を膨らませます。
下のグラフは、市場によく出回っている数種のパン用イーストとのインベルターゼ酵素活性比較分析です。梅花酵母は高い数値を示しました。この特徴を利用し、酵母菌内に存在する他の酵母との共同作業で砂糖不使用のパンづくりが開発されています。

■梅花酵母のインベルターゼ酵素活性

市販のイーストと比べ、高いインベルターゼ酵素活性を示しました。

市販のイーストと比べ、高いインベルターゼ酵素活性を示しました。

ひみつ3発酵によって醸し出される、フルーティな香りと酸味

梅花酵母で醸造した純米酒には、従来の日本酒の味わいに、爽やかなフルーティさが加わっています。専門機関で、梅花酵母使用の純米酒、他の日本酒、ワインの味覚比較分析を行ったところ、梅花酵母を使用した純米酒は、日本酒本来のキレのある味わいと、ワインに似た爽やかな酸味のある味わいを併せ持っていました。
またアミノ酸分析から、他の日本酒に比べて疲労回復を促すリンゴ酸の割合が多いことがわかっており、健康面や料理との合わせやすさにも特徴を示しています。

■梅花酵母使用純米酒の味覚分析

他の日本酒に比べ、ワインに近い味覚特性を持っていることがわかります。

他の日本酒に比べ、ワインに近い味覚特性を持っていることがわかります。

ひみつ4小麦粉より米粉に対する発酵力が強い

梅花酵母は米粉との相性が良く、小麦粉(製パン用強力粉)よりも米粉(グルテン入り)に対し強い発酵力が認められます。できあがったパンは、他の酵母を使った米粉パンや米粉入りパンより深みのある美味しさが感じられます。
下の図は、パン生地を発酵させ、その状況をグラフ化したものです。通常、発酵力は「ガス発生量」で表しますが、梅花酵母を使った米粉生地は、他の酵母を使った米粉生地の「ガス発生量」を上回り、米粉に対して強い発酵力があることがわかります。

■梅花酵母使用の強力粉生地と米粉生地の発酵力比較(低糖生地発酵力)

米粉を用いると発酵が旺盛になることは、梅花酵母の特徴であると判断されました。

米粉を用いると発酵が旺盛になることは、梅花酵母の特徴であると判断されました。

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